在宅介護での抱えないケア

抱えないケアは、介護職の介護負担や腰痛問題を解決するためだけのものではありません。
従来の介護技術の基本であるボディーメカニクスと福祉用具の効果を掛け合わせることで、要介護者の自立支援を促すことができます。
抱えないケアの理念は、在宅介護の現場でも重要です。
抱えないケアでは、できる限り要介護者自身の能力を引き出せるようにアプローチします。
例えばベッドからの立ち上がりに介助が必要な場合、まず要介護者本人の身体機能と立ち上がりの状況から、ベッドの高さが適切かを確認します。
立ち上がりには、腰を少し高い位置に置き、お辞儀をするように頭を下げてから前に乗り出しながら体を引き上げる方法がよいといわれています。
しかし、ベッドが少し低いだけで最初の動作のお辞儀をすることができません。
そのため、在宅介護の場合は毎回家族が手を貸して立ち上がらせる状況になります。
立ち上がりの介助というのは中腰姿勢での作業になるので、繰り返し行うことで腰痛の原因となるものです。

抱えないケアでは、まず住環境を見直すことで利用者の動作の自立と介護負担の軽減を目指します。
低いベッドである必要が特にないのであれば、電動ベッドの導入を促し一人で立ち上がるための動作の取得を支援します。
ほかにも、手を置いて力を込めやすい場所に手すりを置くなどの工夫も必要です。
介護者にも、本人がどうすれば自分だけで立ち上がることができるのかを理解してもらい、本人のサポートを行うように助言を行うなど、介護負担の蓄積を未然に防ぐよう働きかけをします。